きえもの【番外編】⑥
中国放浪記‐ガイド
留学中に、暑い日自宅で水やりをしていると、ふと北京での日々を思い出して、ボロボロ泣いている夢をよく見ました。実際帰ってきてみると、そんなことは全くなく、高校時代のクラスメイトと飲み会に行ったりと楽しいことばかりで、「北京に帰りたい!」と泣いたことは未だありません。
数々の思い出の中、留学期間中の1月の末に父と日本から数人のお客様が来られました(写真1)。父から事前に「全線通訳で斯さんは来るけど、北京の現地ガイドはお前がやってな。それと案内予定地は全部下見(写真2)しといてな」と少々ヘビーな要望で、学期中授業や学校のイベントでバタバタしていた私は、終業から約2週間準備に徹しました。なにしろ北京を熟知している人が私の周りにはおらず、どこに連れて行き、どのくらいの時間をかけるかなど全てを自分で検証しないといけません。悩んだ結果とりあえず、有名な場所を自分なりにリストアップして下見することにしました。
ところで皆さん北京でご存知の観光地はどのような場所ですか?万里の長城、故宮と天安門、鳥の巣などでしょうか。いやいや他にもありますよ、北京市にある世界遺産だけでも頤和園、天壇、明の十三陵、北京原人遺跡と全部で6か所もあります。ほかにも中国を代表する数々の博物館が集結しています。そのような中3日間の北京滞在の旅程を決めなくてはならない上、前後2班に分かれて来られた後、合流してその後洛陽に向かうという複雑な旅程になっていました。寒さも厳しく氷点下10度以下の中、長時間屋外を観光するのは大変な事です。まずは安全に楽しんでいただきたいと考え、陽のよく当たる天壇(写真3)と、国家博物館(写真4)を選びました。
事前に観光地は万全に下見をして、旅行当日を迎えましたが、やはり言葉の問題が生じないか非常に緊張しました。ホテルのチェックインや換金、買い物をしたりレストランでの注文など、普段は何気なくやっていることでも、自分だけの問題ではないので緊張しました。ですが、このガイドの経験が、あらゆる場面で中国語を使って話すことに自信が持てました。その後3月にも中学時代からの友達が来ましたが、案内をすることが出来とても喜んでくれました。
このガイドを通じて、ガイドというものはただ通訳して、観光案内するというだけではなく、ことばの分からない地で旅行する方を守る役目もあるのだと感じました。