きえもの

きえもの 165

先生との事⑬ -浙江省の旅⑥-
 
 オリパラに沸いた夏。これまた歴史的な出来事。場所は高校野球の聖地甲子園です。男子の大会10日目の夕方5時から、第25回女子硬式野球大会の決勝戦が開催されました。現在全国に40校あるという女子高校硬式野球チームの頂点を聖地で史上初めて決めようというのです。高知中央との戦いに決着をつけたのは神戸弘陵学園。と、ここまで書いて「野球ってどこまで迷走するの?」と、無理もありません。でももう少し我慢してください。優勝校の石原康司監督は過去に同校男子チームの監督として2度甲子園に出場した名将。史上初めて男女チームを甲子園に連れてこられたのです。と書いてここからが本題。普段は同校書道科の先生。そして最後は「翠雲」の雅号で活躍される書源誌の誌友なのです。コロナ対策で応援席に生徒も入れない状況の中、無理を承知でお願いして、特別に観戦させていただきました。ナイターの甲子園で、野球が好きで仕方のないJKたちのプレーは明るく、力強く、引き込まれます。機会があれば是非観戦、応援ください(写真1)。
 
 前号紹介の上虞(ジョウグ)は杭州と寧波の中央付近に位置する街。倪元璐の出身地です。この地で観た曹娥(ソウガ)孝女(コウジョ)廟(ビョウ)。後漢時代の曹娥という孝行娘を祀る廟です。廟の前を流れる曹娥江に咲く菜の花が印象的でした。廟の入り口に掛かる扁額「人倫之光」蒋介石の書です。地方部といえ内戦・文革を経て今も美しく残っているのは、蒋介石が地元寧波の出身だからなのでしょう(写真2,3)。
 
 お隣嵊州(ジョウシュウ)は京劇と並ぶ中国2大演劇の1つ「中国の宝塚」とも呼ばれる、女優中心の「越劇(エツゲキ)」発祥の地としても有名な場所です。私達が目指すのは書聖王羲之のお墓。はずなのに、さすがというか皆さん参道脇の山野草に夢中。それ程山の中というのも神秘的です。上虞も嵊州も蘭亭がある紹興市の一部。数多の芸術家を輩出しています(写真4)。
 
 旅もいよいよ終盤。この日の宿泊地は中国三大霊山の1つ天台山です。寒山・拾得で有名。隋代建立の古刹国清寺があります。驚きの天台山と次の目的地雁塔山散策は次号でご案内。浙江の春。のどかな風景を堪能した1日でした(写真5)。


写真1
夜空に輝くスコアボード。このチーム本大会とユース大会を共に2連覇。 石原ワールド超強豪校なのです

写真2
心ある人が工夫をして被害を逃れたそうだ。

写真3
「曹娥説話」は父の死を悲しんで川に身を投げる娘の話。中国では孝女の1人として有名。

写真4
参加の皆さまには書聖の功徳が大いにあったことでしょう。

写真5
お墓とお寺系の1日でした。