きえもの

きえもの 139

八怪の故郷−揚州博物館-
 
訪中して必ず食べるのが羊肉。空港に降り立ったらまず「ヤンロー」食べよ!というほどです。写真1はかなり前に行った昔式の羊肉鍋。中央が煙突状になっていて中に燃料が入ってスゴイ火力。季節は晩秋だったと思いますが、冷えた身体に羊肉の背骨のブツ切りが入ったスープが染みて、ものも言わず食べた事を思い出しました。実はこの写真デジタルデータの中に長らく紛れ込んでわからなくなっていたもの。記録は簡単に出来てもそれを都合よく引っ張り出すのは案外難しいものです。しかしもうこんなクラシカルな鍋で食べさせる店は少なくなりました。
 毎月の原稿は携帯のメモアプリで書くことが多くなりました。少し前ならメモ帳やノートに書いておくアナログでしたが、メールで入稿できるデジタルの便利さはご存知の通りです。反面日々の予定や、仕事の約束は全て1冊の手帳に書き込んでいます。パラパラめくって書いたり消したり。時折古い手帳を見返すと良い字で書いていたり、乱雑な字で書いていたり。簡単に消えないのが魅力です。しかしながら世の中は手書きからキーボードへ。とても便利ですが「削除」ボタンを押すだけで膨大な記録が一瞬で消えてしまうことに違和感があるのも事実です。
 今回ご紹介する揚州博物館では「記録」に焦点をおいた資料を見ることができます。実はチョイ悪君お得意の場所「ここのガイドさん?」と言いたくなるほどです。「拓本を採るには適した紙が必要になります。そこで研究と開発に力を入れるわけですが、地域の環境というか、風土が影響します。盛んなのはこの揚州と杭州。あとは北京。政治、文化上の背景が強い地域で、やはり財力のある場所に印刷所あるようです・・・」彼の立て板に水の話しぶりに昼間のビールがより効いて、拒絶反応イッパイの私。立ったまま寝ていましたが、確かに説明も展示も素晴らしい。拓本から木版印刷の発明は今のアナログからデジタルの発明に近い感動的なものだったでしょう(写真2)。  
最大の見物は今も技師が原稿を書き、木版に彫って印刷していること。実演をしながらほんまもんの製作です。もう1つは木版の保管庫です。紫外線や湿度の管理が重要でガラス越しに眠る大量の木版に現代技術でアナログ記録を残こそうとする執念を感じました(写真3、4、5)。

写真1

写真1
寒いのにビールが多い?
写真2

写真2
紙を検査しているところ。
写真3

写真3
見物人の中でこの集中力はスゴイ!
写真4

写真4
彫りあがった木版。
写真5

写真5
保管状況が見えるコーナー。最高レベルの UVカットガラスだとか。