書具よもやま話

書具よもやま話 37

筆の寿命③


使い方をというか、手入れの仕方が悪いことで極めて寿命が短くなるのが小筆です。求められる作業が細かい小筆は、もともとの毛質は当然のことながら、使用後も良い毛の状態を保つことが大切なのです。もっと言えば、残墨を上手く調整しながら自分の使いやすい筆に作り上げることが大切なのです。
 写真右側の筆は使った後手入れをしていないもの。左側は上手く根元を固めて筆先だけ残墨がないものです。右側の筆は次に使うとき、いきなり力ずくで筆を下ろそうとしてはいけません。事前に筆先に墨を付け、筆先が程よくふやけるのを待ってから使わないと、墨でくっ付いた毛先が裂けて枝毛ができてしまいます。こうなると筆先のまとまりが悪くなり、細かい筆使いができなくなります。「新品の筆の糊がゆるいのですぐ根元まで下りてしまう」という話も聞きますが、あまり強く固めすぎると同じ事がおこってしまうのです。
 左側の筆は程よく筆固めをしていますので、筆先はかなりきれいな状態になっています。残墨で筆が上手く固まっていますので、筆の弾力もでき非常に扱いやすく、書きやすい状態になっています。こうなると寿命も長く使えます。
 以前仮名作家の話によると、長くて十日。早いと三日しかもたない物もあるとのことです。極端なことだとは思いますが、小筆はそれ程繊細な物なのです。


写真1