書具よもやま話 35
筆の寿命①
先日50歳になりました「まだまだ若造!」という声が飛んできそうですが、半世紀大きな怪我や病気もしないで、今のところは家族平和に過ごさせていただいておりますこと、皆様のお蔭と感謝いたします。
さて、そうは言うものの何にでも寿命というものがあるには間違いありません。皆様のお使いになる道具をとっても、硯は普通に使えば少々では無くなりませんが、墨、紙は哀れにも一瞬で寿命を迎えるわけです。そこで今回は寿命の長さが最も曖昧な筆のお話です。
写真の2本の筆先。左は一度使って洗っただけの羊毫筆。右は私が生まれて僅か数か月後の昭和39年睦月(軸に彫ってあります)に作られた奈良筆の名筆。これも羊毫筆です。
20歳になった私は自分の腕もわきまえず、アルバイトで貯めたお金を握りしめ、その美しさだけに魅了されこの筆を買うに至りました。あえて金額はもうしませんが、今持っている筆の中で当然ナンバー1ですから、本当の衝動買い。バカですね~。でもそれから30年してこのページに出してみようとするのですから、相当(後悔)いや、いい買い物だったのでしょう。
話はこれからが本当の部分。実は写真を撮るのに苦労しました。実は「左に比べ右は使い込んできたので磨り減ってきれいに毛が並んでいるでしょうー。でも羊毫の筆はこんなものではありません。まだまだこれから30年は書きまくれますよー」といきたかったところ、残念ながらたいして減っていません。私の記憶では3年ぐらいはこの筆ばかり使っていたのですが、あまりにもいうことを聞かないので、無視しているうちに30年経ってしまったのです。もう少し書きたいのですが、写真が小さくなると見えにくいので、次回いうことでお許しを。