書具よもやま話

書具よもやま話 33

鈐印(ケンイン)⑪ ―何度押しですか


選別が終わってもホッとできません。そう印を押さなければ!いくら心構えと押す環境を整えても、印を目的の位置に、思う角度で押すのは難しいことです。感覚に頼って押すと、思いと違う結果になりがちです。
 目的の位置に予想通りに押すには印矩をぜひとも使いましょう。印矩を使うと写真1のように、作品の上に印を置きながら位置を決め、安心して押すことができます。印矩は写真2のように、角を面取りしているほうを紙に接地するようにしてください。この加工は、印の側面に着いた印泥を、印矩が巻き込んで紙面を汚さないようにするためのものです。
印矩の側面にきちっと印を当て押しましょう。私は無精者で掃除していませんが、使用後印矩に付いた印泥はきれいに拭き取ってください。
 ところで皆さんは印を何回で押されているのでしょうか。1回で押そうとすると、どうしても印面にしっかり印泥を付けてしまいがちです。印泥を付けすぎると、本来の印影よりシャープさが無くなります(1回押しが悪いというわけではありません)慣れが必要ですが、薄く印泥を付けて、2回押ししてみてはいかがでしょう。位置が変わらないよう印矩は無くてはなりません。必ず印矩の長辺の部分に文鎮等をのせて、動かないように固定して練習してみてください。
 3回押しをする知り合いの篆刻家は、動かないように別注で、重くて大きい印矩を作って使用しているほどです。機会を作って印を押すお稽古に取り組まれてはいかがでしょうか。

写真1
写真1
写真2
写真2