書具よもやま話 29
鈐印(ケンイン) ⑦ ―赤ならなんでもイイ?―
もし「あら、あなたワイシャツに口紅が」などというようなことが我が家でありましたら・・。愚妻はどのような反応をするのでしょうか。これは考えるだけで面白い!いや恐ろしい。それは考えだけで、現実に起こるようなことはまあ無いでしょうし、無いように常々心掛ける必要があります。なぜか?それは私の勤務いたします会社では、愚妻が会長。私は取りあえずの社長ですから、当然即刻クビ。家庭と職を同時に失うことなど想像したくありません。
さて、過日ラジオで聞くところによりますと、今春の口紅、流行を真っ赤にもっていきたいそうで、上手くいけば(詳しくは忘れましたが)20年ぶりのリバイバルだそうです。赤系の色はパッと艶やか。魅惑的でエネルギッシュ。そして美しく見える。白に赤は日本美人の象徴。日本の国旗。日の丸弁当・・・。まさしく美しくすがすがしいのです。
さあここまで書きまして本題です。皆様印泥の色、気にして使っておられます?紙の色も白といっても乳白色、真っ白、薄ベージュ・・・ですし、墨の色も真っ黒からやや茶色・・・です。作品自体もにじみが多いものや擦れの多いもの。線が太い、もしくは細いなど様々です。
現在市販されていて皆さんが良く使われている印泥のほとんどは朱色系ですが、微妙に赤めだったり、黄色めだったりの品もあります。その中で「美麗」という印泥だけが鮮やかな赤色ですが、近年日本向け輸出の品は、どす黒い赤色のようです。
うちの会長によると「その日の服装や行く場所などで、口紅の色は変えるもの。一色しか持っていない人は少ないのでは」と。だとすると印泥は口紅と同じこと。押す色や場所、当然印のデザインと、全てが(お顔の、失礼)作品の出来に影響するのではないでしょうか。作品の状況に合わせて色を変えてみてはいかがでしょう。鈐印に何かしらの興味をもっていただくことが、大切です。
「あら、こんなところに赤い色が」程度の押し方は、無いとは思いますが、適当に口紅を塗ることにちかいのかもしれませんねぇ。(くれぐれもたとえ話。失礼をお許しください)。