書具よもやま話 24
鈐印(ケンイン) ②
選別会場の片隅で、大きい作品の隅の部分だけ机に乗せて、チョチョイと押そうとしたことはありませんか。これをやるとほぼ100㌫今までの苦労が水の泡になると予想できます。鈐印するときに最も重要なことは押す作業をする場所です。これは作品を見渡せる広い場所が必要だと思えばいいかと思います。何か月もかけてやっと出来た自分の作品に最後のとどめをさして完成させるという気合が薄れると「ズルッといくのです」。印を持つ手に全神経を集中させて、息を止め目を見開き、そして大胆にビビらずに取りかかる必要があります。
しかし、残念ながら心がけとロケーションが良くても失敗するのが印押しです。仕事柄拝見していて、印を押す人の多くはこの道具の影響が(といいながら私も過去に売ったことがあります。お許しください)うまく押せない原因の一つになっている可能性があります。
写真1は同じ印をほぼ同じ気合で押しましたが、左は線が太く彫り残しがみえます。写真2は印を押す時の下敷きです。右の印影は書源。左の印影は既製品の印褥台です。昔売っていたものは硬かったのですが、最近の物は少しくいこみます。このことで線が太くなってしまうのです。平らな硬い場所で、書源を下敷きにして押すのが一番美しい印影を残せます。
写真1
写真2