書具よもやま話

書具よもやま話 23

鈐印(ケンイン) ①


作品の選別が終わりホッとしたら、そう、鈐印(押印のこと)しなければなりません。緊張しますよね。先生に「押してもらえません」。などと頼んでいる人はいませんか。確かにその気持ちは良く解ります。そりゃ、やっとここまでできたのですから、もし失敗などしたら少なくとも3日ぐらいは嫌な気持ちで後悔するかもしれません。でも考えてもみてください、頼んだ先生が失敗したら文句も言えず一生恨むことになるかもしれません。ですから自分でした方がいいんじゃないかと思うのです。

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 ではなぜ鈐印が苦手と思う人が多い(これは私の勝手な思い込みかもしれませんが)のでしょうか。答えは簡単です。(多分)押し方を教えてもらえない。どこに押したらいいかわからない。等々理由は様々でしょうが、私が考えるの(エラそうですみません)に押印についての手法を普段から良く練習していないことが原因ではないでしょうか。


 かなり昔、小坂先生の印譜集「黙語堂印存」を作る際、押印させてらいただくまでに1日練習したことがあります。講師は川村龍洲先生。なかなか合格がいただけず悔しい思いもしましたが、このことが鈐印に興味をもつ結果となったのです。私見ですが、段取りさえ間違わなければ絶対失敗せず鈐印は成功します(ただ少々練習する必要がありますが)。


 さて、良い印影のために必要なことは、まず印その物の状態が大切です。要素に言いにくいことですが、印その物の良し悪しもあります。作品をより良いものにするためには、良い印であることが大切です。自分の作品である証明ですから、良いものを使いましょう。厳しい言い方ですが、レベルの低い印が押された作品は、『作者の見識が低い』とみられるほどなのです。次に印面の状態です。何度も押印するうちに印泥のかすが溜り、汚れてはいませんか。印泥の油分が印面で硬化して残っていると、良い印影になりません。印をぬるま湯に浸けておいてから、写真のように柔らかめの歯ブラシに、中性洗剤をつけて洗ってください。印泥に水分は厳禁。よく乾かせてから使ってください。