書具よもやま話 19
筆が割れる
写真右側の筆、「書いていると筆が割れる」とのことで返品いただいた筆です。良く見ていただくと毛の根元の部分が広がっています。根元部分を持つと石のように硬いシコリができています。一定期間使用されていて、使用後の手入れが不十分なことが原因です。墨がしっかり含まれているうちは書けますが、墨が減ってくると根元の広がりに引っ張られて筆先が割れてくるのです。このような筆は再生が難しいのですし、それなりに使われた結果でもあるので新しい筆に替えられるのが良いと思います。
左の筆は毛の根元を意図的に固めた筆です。筆管の部分から真直ぐに(膨れることなく)固まっているのが分かると思います。半紙書き以下の筆は、細かい筆使いが求められることが多いので、根元を固めることで使いやすくなるようです。好みもありますが、一度お試しいただくと良いと思います。書源社の伊吹・富士の調和体作品用選定筆は、固めないと良い効果が出にくいようですので、固めてご使用いただくことをお勧めいたします。
兼毫筆(色々な動物の毛を混ぜて作った筆)は使いやすい分寿命が短く、筆先の毛がすり減ると細かい筆使いが出来にくくなります。使い方や環境にもよりますが、条幅用等の大筆で一か月。小筆などは極端な場合数日で使いにくくなることもあります。また硯で必要以上に筆先を慣らさないでください。硯は墨を磨るヤスリですから、筆先も削れてしまい寿命を短くする原因になります。