中国よもやま話

中国よもやま話 92

― 中国食べ歩き ‐古鎮めぐり⑯―


 街の入口で突然斯さんが童老師に携帯で連絡を取ります。「北條さん私の芸術館に来てくれて本当に有難う…」(童老師ってこんなに日本語お上手だったの?)「館長には連絡しておきますからゆっくりして行ってくださいね」。有難さと共に、この後大変な事になるだろうということぐらい想像できなければ、人民相手に仕事は出来ません。案の定芸術館に着くと館長からの連絡ということで伝言が入っています。「今寧海で会議をしています。昼までには戻りますからゆっくりしていてください。絶対帰らないで」。最近斯さんのこのような行動にあっけにとられると同時に喜びを感じる自分が…複雑です。急遽ご参集いただいた地元の名士20名程の昼食会で、印象強い食べ物が寧波地方名物の臭冬瓜です(写真1)。名前の通り大いに臭い!塩辛い!でもこんなのが好きになる自分が好き!本当に有難うございました。と、ここまで書いたところで、龍洲先生が前童に行かれるとのお話が聞こえてきました。お許しを得てここから先は『らんだむ・のおと』へバトンタッチ。我々は前童の奥にある「陳家三退」という日本人はまだ行ったことの無い古鎮に向かいます。誰も…というのは館長の王蒼龍老師も「私も知らなかったので一緒に行きます」とおっしゃられる程の無名さ。たまには「斯さん流石!」と褒めておきましょう。ただ我々の珍道中と違うのが、童老師の高弟王老師が連絡すると、案内人が現地で待っていてくれることです。中国は古鎮ブーム。こんな奥まったところでもヒットすると観光客が溢れます。それだけに一生懸命なのでしょう。
 陳家三退は2011年に調査され知られるようになった古鎮のため、政府の予算もまだおりていないようです。こんな古鎮はみてくれこそ悪いのですが、昔のままが大いなる見所です。住所は寧海県桑洲鎮麻山片陳家村(写真2)。Googleで見ると本当に山の中です。地元の案内人の陳麗琴さん曰く「日本人ははじめて見たね」と。
 さて「退」は寧海の方言で、横一列の建物の意味だそうです。「陳家三退」は陳氏一族が集中居住していた豪邸なのです。卵石敷きの路地に踏み入ると、一つ一つの庭が見え、玄関周辺の花壇の石の欄干や塀、門枠の精緻で美しい木彫り、屋上の馬頭壁、等々いたる所に当時の持ち主の裕福さを見ることができます(写真3、4、5)。  つづく

写真1

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少しずつメシと一緒にが旨い。
写真2

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少し前の看板にも風情を感じます。
写真3

写真3
手の込んだ門。貫通した丸太。初めて見た造りです。
写真4

写真4
卵石を美しく敷き詰めた庭。
写真5

写真5
江南古鎮の代名詞『馬頭壁』