中国よもやま話 58
― 中国食べ歩き ‐古村の披露宴① ―
数ヶ月間『らんだむ・のおと』で紹介された『李氏の紙』。龍洲先生とご一緒した数ヵ月後再訪しました。ここは来る度に中国通の猛者でも眼の色が変わる出来事が起こります。
紙屋の李社長に再々ご馳走になるのも悪いのと、「ちょっと見学すればいい」という同行者の希望もあり、村外れのいつもの山荘で食事をしてから電話をすることにして、店の主人に「美味い酒と料理」をと頼むと山桃酒と豆腐料理がでてきました(写真1.2)日本の自家製梅酒のようなものでしょう。浸けた瓶ごと出てくるところも美味さを感じるところで、なんとも言えない甘みです。豆腐を食べるのは二回目ですが、この店で豆からの手作りだけあって濃厚な味わいで大好きです。
食事も終わり李社長に電話すると「後二時間で帰る。なんで連絡もせずに来るのか、私が帰る前に帰ったら二度と村には入れない」。とご立腹です。ちょっと考えるとわかることだったのですが、遠方から来た知人をそのまま返してはメンツが立たない。気を遣ったことがかえって失礼になったようです。
諦めて村に入るといつもと雰囲気が違います。大きな鍋に大量の食器(写真3)。李社長の奥さんに聞くと「村の結婚披露宴があるの」とのこと。同行者もこのあたりから「ゆっくりしていこう」と先程までの態度と一変します。近年ホテルの披露宴は横目に見ることは多くなりましたが、この田舎でのとなると少々訳が違います。新郎新婦の登場まで時間があるとのことなので、紙の原料となる竹を伐採している現場へ向かいます。
村の周辺は竹藪だらけなので、あまり気にも留めていませんでしたが、よく見ると竹に何か書かれています。
どうも名前と数字です。誰の所有で何年に出た竹かを記入してあるのです。紙用に使うには2年目の竹が良いと言っていました。竹の伐採は細い竹を身体に刺して大けがをすることも多く危険で低賃金な仕事。「若い人はもうこの仕事をしたがらない」とのことで近い将来、筆の軸が竹で無くなる可能性もあります(写真4・5)。
写真1
部屋中に広がる甘い香り。食欲が湧きます。
写真2
醤油をかけただけのシンプルさが豆腐の味を引き立てます。
写真3
村の集会所が披露宴会場になります。
写真4
昔から竹は村人の財産。大切に育てます。
写真5
気を抜くと大けがをします。