中国よもやま話

中国よもやま話 16

― 巴蜀の国へ④ ―


 書源社の旅は、中国の旅行会社と綿密な打ち合わせをすることで、どこにもないツアーを心がけています。成都周辺と峨眉山などの観光のツアーは多くありますが、五泊六日で重慶まで回ってしまうものは少ないと思います。中国の道路整備状況が良くなったことで実現できるようになりましたが、峨眉山に日中登り、夜には成都。そして次の日は重慶に宿泊するなどということは、少し前までは不可能だったと思います。


 大足県は重慶市の西側、四川省との境にあります。石窟を掘るために金具が必要なことから、発達した技術が、今もこの地の産業となっています。四川省から分離された小さな街に、この世界遺産はあります。
唐末期から南宋時代にかけて造られた石窟は約七〇あり、中国石窟文化晩期の見事なものです。多くの石窟がある中で、宝頂山と北山の石窟群(写真1・2)は非常に見応えのあるものでした。特に全長三一㍍もある釈迦涅槃像(写真3)は目を見張りました。
成都から約五〇〇㎞。重慶への道のりは遠いのですが、石窟の素晴らしさに、北山石窟では、閉門時間まで時間を惜しんで見学しました。


 長い旅路の終点重慶ではこの地の名物火鍋料理です(写真4)。江沢民主席もこられた名店ですが、着いた時間が遅く、広い店内に我々だけの貸し切りです。名前の通りその辛さは言葉にもなりませんが、この頃になると皆さん慣れてしまわれたのか、辛さを楽しんでおられたようです。


 最終日は早朝重慶から空路上海にもどり、書源社旅行の終焉に必ず立ち寄る豫園(写真5)での昼食と、お買い物です。日曜日でもあり、ひどい混雑でしたが、中国の凄まじいエネルギーを感じるこの地に来ると、あと少しの旅程に気を引き締める反面、やはりホッとします。 


 次回の書源社旅行は浙江省―水郷と大自然・古刹を巡る旅です。この記事を皆さんがご覧になる頃には、きっと私は最終の準備をしていることでしょう。中国の旅行社でもツアーの無いマニアックなコース。皆さんにご紹介できるのが今から楽しみです。









写真1

写真1
宝頂山石刻は石造も大きくダイナミックなものが多いです。
写真2

写真2
北山摩崖造像は繊細なものが多く、時間の経つのを忘れました。
写真3

写真3
世界遺産大足の象徴釈迦涅槃像約八〇〇年間ここで寝ています。
写真4

写真4
皆さん本当にお疲れ様でした。疲れた時には辛い物。実感しました。
写真5

写真5
豫園の雑踏の中に身を置くと、よその国なのになぜかホッとします。