中国よもやま話 13
― 巴蜀の国へ① ―
子供の頃、夢中で読んだ横山光輝先生の漫画三国志、高校生以来何度となく読み返した吉川英冶先生の三国志。学生時代に読んでこの地を夢見ていた司馬遼太郎先生の『中国・蜀のみち』。私にとって成都は実際には行ったことのない、でも昔から知っている憧れの地でした。書源社で成都方面への旅行が企画され、全計画をまかせていただいた、今回の旅行はそんな背景の中、私事ですが、本当に感慨深いものでした。
重慶は巴、成都は蜀、現在の四川省一帯は昔から巴蜀の国と呼ばれ、漢中の漢民族からすると、高い場所で極めて行きにくい、危ないところであったことはまちがいありません。
上海浦東空港で乗継後三時間。一日がかりで入蜀しましたが、この奥深さ、まさに成都は辺境の地でした。到着するとまず向かったのが、麻婆豆腐を一四〇年前に作ったといわれる『陳麻婆豆腐』。(写真1)皆さんご存知のとおり、四川料理は激辛で有名です。事前にガイドの王さんから、「外国人向けに辛さは控え目にしています」。と言われていましたが、出てきた麻婆豆腐(写真2)を口に入れたとたん、今まで味わったことのない辛さを感じました。舌の上を電気が走るといいましょうか。一度は体験していただきたい絶品です。
二日目朝、期待通りの雨。世界遺産の青城山は登らず。車で行ける山門前で記念撮影に変更して終了。都(と)江堰(こうえん)賓館での昼食には、中国では珍しい刺し身(写真3)がでました。
江口先生はじめ皆さんにお願いして変更した訪問先は、成都パンダ繁育研究基地です。ここは絶滅が危惧される希少動物の保護、繁殖、生態研究のために設立された研究機関で、目玉はなんといっても保育器の中で育つパンダの赤ちゃん。写真撮影は厳禁なのでお見せできませんが、四匹並んで寝ている赤ちゃんはぬいぐるみ?のようで可愛かったです。ジャイアントパンダ(写真4)が、何頭も自然に近い環境で飼育されている光景は日本では絶対というか、ここでしか見ることはできません。書道団体の旅行でこの地を訪ねるのも、璞社らしいところですが。
写真1
麻はあばた。婆はおばあさんの意味。「陳おばあさんが作った」
写真2
辛子辛いより山椒の強烈な辛さが舌を痺れさせます。
写真3
味はいまいちです。ここでも日本の生わさびのパクリが。
写真4
皆さん幼少にかえる一瞬でした。