中国よもやま話

中国よもやま話 6

― ベトナムを旅する 3 ―


 ハノイの次に到着した街は、ベトナム最後の王朝、阮朝の都フエです。ベトナムのほぼ中央に位置し、王宮跡を中心とした史跡の多い街で、世界遺産に指定されています。


 史跡の中で特に印象に残ったものとして、カイディン帝廟です。一九三一に完成したものですが、廟内の装飾すべてがカットガラスで造られています。(写真1)その美しさに見とれていると、なにやらガラスに文字が見えます。そうです、このガラスは廃品となった瓶などを砕いて使っているのです。


 昼食は宮廷料理です。食事の前に衣装を着替えることになりました(写真2)。もちろん江口先生は王様、奥様はお后様です。宮廷音楽隊、美女の歌唱団付きの、予想外で豪華な趣向に、旅の疲れも忘れました。


 今回の旅行中も少し勝手をして夜の街に忍び出ました。お目当てはガイドのタン氏から話に聞いた、ベトナム名物、アヒルの卵です。ほとんど人気の無い暗い街角に、ローソクを一本立てて女性らしき人が座っています。路上に数個の椅子があるだけで、屋台とも呼べません。声をかけると、雑巾のような物で拭いたお盆を一つ地面に置きました。その上に一枚皿を載せて、なぜか濡れた草のような物が置かれました。鶏の卵と変わらない大きさの物がでてきました。暖かかったからゆで卵と分かりました。「明日からのこともあるから本当に大丈夫」と私がタン氏に聞くと「絶対大丈夫」と、一言。殻を一部取って、塩とコショーを付けてスープを飲んだ瞬間、あまりの美味しさに感動しました。実はこの卵、孵化直前の物で、頭や羽が見えています。タン氏は、お皿の草は「精力止めです」と言っていましたが、私は絶対下痢止めの薬草だと思っています。私は卵よりこの濡れた草を食べるのが本当は一番不安でした。(写真3、4)



写真1

写真1
一三年かけて造られた廟。全てにおいて中国を意識しています。
写真2

写真2
フォーン川が正面に見えます。王様も同じ風景を見ていたのでしょう。
写真3

写真3
地面に置かれたお盆を囲んで食べます。
写真4

写真4
ベトナム人にとってはアヒルの卵は最もよく食べる元気の素。