中国よもやま話

中国よもやま話 71

― 中国食べ歩き ‐春節① ―


 中国人の一年で一番重要な祭日が春節です。旧暦の元旦を中心に約一カ月半、民族の大移動がおこります。もう日本人が忘れてしまいつつある凄まじいパワーの正月観。家族の繋がりの強さを感じます。それだけに外国人がこの時期にうろうろ訪中することは少ないのです。


ここ数年、愚息の恭兵が夏休みの度私の友達、斯海濤氏宅に居候しているうちに交流が深まり、斯夫人の両親からも「私たちの孫」とまで呼ばれるようになってしまいました。一人っ子政策の弊害か、今の中国人はどうも子供に甘すぎる人が多い気もしますが、そこまで打ち解けてしまう(私譲りの)恭兵の厚かましさに恐ろしさも感じます。ということで、「春節になぜ孫がいないのか」と、爺さん婆さんの一言で斯さんから「何とか来ない」と招待があり、私が付き添いで伺うことになったのです。


 今年の春節(春節の日は毎年変わります)は2月10日。日本の空港で中国便発着数が最多の、関西空港国際線出発ロビーは、春節を祝う華やかな飾り付けがされているものの(写真1)、お客はまばら。尖閣の問題はあらゆるビジネスにも損失を与えました。売店の人も「日本に行くとひどい目に合うといって中国人は来ない。一番のお客さんだったのに」と困っていました。


仕事では普段便数の多い上海便を使っていますが、斯さんの住まいは杭州なので、時間の短縮と、特にこの時期の移動の困難を避けるために、杭州蕭山空港へ向かいます。関西から毎日全日空が直行便を運航していますのでとても便利です。 
さて、杭州行搭乗口はどうも普段と違うようす。「人がいない」とすぐわかりました。「何人乗るの」と係員に聞くと「5名様です」と。当然機内はガラガラ。客室乗務員4名に機長、副操縦士を合わせると6名。完全にファーストクラスです。ですから搭乗と同時に「北條様」と名前で呼ばれます。実のところ恭兵は大の航空業界好き。このチャンスを逃してなるものかと、離陸直後からシートベルトを手早く外して機内をウロウロ。持ち前の厚かましさでCAの皆さんと話し込みます。恭兵にとっては本当に夢のような時間だったことでしょう。(写真2)


入国審査場までCAの皆さんと、機長、副操縦士さんまで追っかけるようにして来てくださり、記念撮影をしました。「こんなこともあるんだな」と私のほうが驚くばかりの時間でした。午日写真を送った恭兵に、客室乗務員の責任者の方から丁寧なお手紙までいただき、ご配慮に感動しました。


飛行機は午後便でしたので、斯さんの家に着くころにはもう暗くなっていました。PM2.5の関係で今年は爆竹を自粛するよう言われているそうですが、そんなことをこの民族が聞く訳もなく、閃光の後に爆音がやってきます(写真3)。
「待ってたんだ、さあ始めるぞ」とお爺さんの笑顔に夕食は始まりました。

つづく。


写真1

写真1
昨年までは中国行観光客であふれていたそうです。
写真2

写真2
チーフパーサーと話し込む恭兵。
写真3

写真3
年越しの時間帯は爆音が続きます。