中国よもやま話

中国よもやま話 112

― 中国食べ歩き ‐古鎮めぐり‐淮安
 
 「パパ~」と可愛い声で話しかけられるときは要注意!しかし男親というのは悲しいもの、エライ目にあうのが分かっていても娘にはついていきます。目的が達成したら即「バイバイ」ですが、それはそれで笑っていられる私はチョーバカ親です。
 
 淮安に来た一番の目的地である周恩来故居です。ここは正に中国人民の聖地です(写真1)。1972年北京空港で田中角栄首相と握手する周総理の映像は小学生だった私の目に衝撃的なものとして映りました。大阪万博も終わり、先進国の仲間入りを果たそうとしていた我が国と、映像で見る中国とのギャップの大きさに強い関心が生まれたのです。
故居の入場は無料。多くの見学者でにぎわっています。訪問先でよく所縁のある著名人の故居に行きますがほとんどが有料で、展示資料の管理等もホッタラカシという残念なところが多い中、さすがここは素晴らしい。埃すら無いほど整備ぶり。入場すると江沢民氏をはじめ多くの共産党トップの教えが掲示されて背筋が伸びます。写真2は出生の間。この地の官僚地主の子供ですから、バリバリお坊ちゃま。その上イケメン。毛沢東に粛清される多くの幹部の中ついた異名が「不倒翁」。毛沢東のイエスマンとして仕事をこなすその心中は定かではありませんが、展示室の文字を見るに写真3の筆跡は普段のものなのでしょう。それに対し「淮安日報」の文字は毛沢東の「人民日報」の書きぶりに似せているようです。筆跡まで意識する徹底ぶりに権力闘争の激しさの一幕を見たようです(写真4、5)。
 
 「中国には『水を飲むときには、その井戸を掘ってくれた人を忘れない』という言葉があります」田中首相が訪中する2日前、10年も前から交流があり、国交正常化に尽力してきた実業家岡崎嘉平太氏をもてなす食事会での周氏の言葉です。お互い兄(岡崎氏)弟と呼び合う程の仲であったお二人の友好関係が、故居中央の庭に植樹された桜の樹から伝わり、改めて感動をしました(写真6)。
自由気ままに育つ娘に『井戸水』の話をしましたが、はたして理解してくれる?と嬉しいと願う限りです。
 
 

写真1

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騒ぐ人などさすがにいません。
写真2

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広大な敷地からも貴族的な生活を窺える。
写真3

写真3
右上がりの少ない穏やかな字。
写真4

写真4
明らかに「人民日報」を意識した文字。
写真5

 
写真5
明らかに「人民日報」を意識した文字。
写真5

写真6
田中首相の後ろに植樹されている。